「So…」01
>So easy
「……何だ」 ポカンと、惚けたように。 「なぁんだ…」 浮かれたような、稚い口調で。 「こぉ〜んな、簡単なこと…だった、んだ…ねぇ……」 くすくすと、子供のように無邪気な笑みを浮かべて。 「――さよなら、名探偵…」 白い影が。 翼を拡げることもなく。 昏い。 黒よりもなお昏い藍の闇に。 吸い込まれるように。 引き寄せられるように。 風に飛ばされた、リボンのついた綺麗な帽子のように。 ふわりと静かに墜ちていった。
残されたのは、赤い、赤い花弁。 キミの、存在していた。 キミが、実在していた。 ただひとつの、証。
――神様、どうか。
あんなにも、鮮やかな。 あんなにも、清らかな。 あの圧倒的な眩いその存在が、嘗て確かに『此処』に在ったことを。 証明するものは、もう僅かに遺されたその赤だけ。 その僅かな痕跡すらも、やがては綺麗に。まるで始めから何も無かったかのように、消えてしまうのだろう。
この胸に、癒えることのない大きな虚無を。この心に、見えない致命傷だけを遺して。
彼の名を。 本当の名を。 一度も本人に向かって呼ぶことが出来なかったのだと、気付いたのは。白い鳥が、昏い深淵に墜ちた直後のことで。 呼びかけても返ることのない、呼びかけは。 伸ばしても虚空を掴むしかない、この腕は。 伝えたくても、もはや伝えられない言葉は。 ――『彼』を喪った俺、は。
一体、何処へ行けばいいのだろう? と。 乾いた瞳を見開いたまま、漠然と思った。
2004.12.13. GUREKO |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||