「So…」01

>So easy

 

 

「……何だ」

ポカンと、惚けたように。

「なぁんだ…」

浮かれたような、稚い口調で。

「こぉ〜んな、簡単なこと…だった、んだ…ねぇ……」

くすくすと、子供のように無邪気な笑みを浮かべて。

「――さよなら、名探偵…」

白い影が。

翼を拡げることもなく。

昏い。

黒よりもなお昏い藍の闇に。

吸い込まれるように。

引き寄せられるように。

風に飛ばされた、リボンのついた綺麗な帽子のように。

ふわりと静かに墜ちていった。

 

残されたのは、赤い、赤い花弁。

キミの、存在していた。

キミが、実在していた。

ただひとつの、証。

 

――神様、どうか。

――どうかこの汚れた魂を。罪にまみれた手を。

――醜い存在を。感情を。

――世界から、この世の全てから。

――神様、どうか。

 

――きれいさっぱり、消し去って下さい…。

 

あんなにも、鮮やかな。

あんなにも、清らかな。

あの圧倒的な眩いその存在が、嘗て確かに『此処』に在ったことを。

証明するものは、もう僅かに遺されたその赤だけ。

その僅かな痕跡すらも、やがては綺麗に。まるで始めから何も無かったかのように、消えてしまうのだろう。

 

この胸に、癒えることのない大きな虚無を。この心に、見えない致命傷だけを遺して。

 

彼の名を。

本当の名を。

一度も本人に向かって呼ぶことが出来なかったのだと、気付いたのは。白い鳥が、昏い深淵に墜ちた直後のことで。

呼びかけても返ることのない、呼びかけは。

伸ばしても虚空を掴むしかない、この腕は。

伝えたくても、もはや伝えられない言葉は。

――『彼』を喪った俺、は。

 

一体、何処へ行けばいいのだろう? と。

乾いた瞳を見開いたまま、漠然と思った。

 

 

 

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2004.12.13. GUREKO

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