× 闇色紳士的20題-19 ×
「容赦のない手腕」
※新Kです。K新じゃありません(爆)
「そろそろ一発やってみませんか?」 TVでも見ませんか? 夕飯でも食べませんか? とでも言うような、至極アッサリとした口調で告げられたその一言に、俺は飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。 「ちょ…っ、何やってるんですか! ああ、ああ…こんな処にまで!!」 怪盗は咽せる俺にも構わずに、わたわたとご自慢のスーツに出来た茶色い染みを、返した手の平からボフンと沸き上がる煙と共に取り出した染み抜きで拭き取る。 俺はといえば、怪盗が自慢のスーツの染みを落としている間中、気管に入ったコーヒーにソファに突っ伏して咳き込み、呼吸困難に陥る羽目になった。 「大体っ、タイミングとか色々あんだろーがっ! 人のこと散々『情緒無し』だの何だの言ってたくせにっ! ムード無さ過ぎだお前っ!!」 「付き合い始めて三ヶ月ですよ? 枯れた老人じゃないんですから、いい加減セックスくらいするでしょーが」 「セ…ッッ! セックスとかはっきり言うなっ!!」 あながち咽せていたせいだけとも言えない、紅潮した顔を上げて大声で遮ると、呆れたような冷たい半眼で溜息を吐かれた。 「……アンタどこの箱入り娘ですか」 「お前こそ、もうちょっと恥じらいとか持てよっ!」 「何で男同士で恥じらったりする必要があるんですか、馬鹿馬鹿しい。そもそもキスだって『此処じゃムードが』だの何だのと無駄に引き延ばして……。全く、ハーレクインロマンスにドップリ浸かった処女じゃあるまいし。堅苦しい推理小説ばっか読んでるからって、いい加減、恋愛に夢見過ぎるの止めて下さいよ」 「俺はオメーみたいに、山田風太郎網羅するほど下半身に忠実に生きてねーんだよっ! 理性の人だからなっ!!」 先日、怪盗が書斎で熱心に何かを読んでいるのを目撃した俺が、コイツが俺の家で調べ物なんて珍しいな…と思いつつ、好奇心に負けて覗いてみたら映画化もされ代表作とも言える(怪盗が後で言っていた)「くのいち忍法帳」だったのだ。その時の衝撃は計り知れない。そんなものまで収集していた、実の父親の神経も理解し難いが、官能小説を真顔で読んでいた怪盗紳士は更に理解不能だった。 「山田風太郎先生をバカにするのは止めて頂きたい。あれはれっきとした大人の男のロマンスです。――それに! 若い男が性に貪欲で何が悪いんですかっ。むしろ健全な証拠でしょ? 大体、イイ歳した男が自宅にエロ本の一冊も無いなんて気色の悪い…。あなたもしかして『妄想』だけで満足とか言っちゃう、単なるムッツリじゃないですか?」 「うっっがぁあああああっ! ムッツリ言うなっ!!」 「図星ですか、名探偵。人は認めたくない事実を指摘されると、より逆上するとよく言いますしね」 「うっせぇ! まだ早いっつーんだよっ!!」 「私的には遅いくらいです。いい加減味見のひとつもさせて下さらないと、今後のお付き合いのことも考えさせて頂きます」 「味見ってお前なぁ…っ!」 「はっきり言ったら煩いから遠回しに申し上げたのに、何が不満ですか」 ちなみに。怪盗を口説き落としてお付き合いを始めるにあたって、最初に性的なニュアンスを伝えたのは俺のほうだったりする。その時点ではっきりと役割分担を決めたわけではないが、俺が「抱きたいっつー好きだ」と言った時に怪盗は反論しなかったため、恐らくそう言う行為の場合は俺が男役であるという確信は一応持っている。 だから。本来なら俺がやりたがり、怪盗が戸惑って始めはちょっと抵抗してみる。→俺が宥めて何度目かにようやく…というのが普通の展開だと思うんだが…俺は何か間違っているか? 夢見過ぎなのか? そんなささやかな夢ですら、探偵は見てはならないのか…っ!? 「だから、何でそうやりたがるんだよ…。そんなこと言ってるけど、オメー実は性欲あんまねぇだろ? 泊まってっても、朝あんまし勃ってねぇし。大体…男同士なんだから、少しは躊躇してみせろよっ。頼むからっ!」 「だからこそ…ですよ。元々少ない性欲を分かち合うのに、それが楽しめないようではお話にならないじゃないですか。性の不一致は男女間でも別れの原因として高ランキングされている、永遠のテーマですからね。同性同士なら尚更でしょう。私としては、駄目なら駄目でさっさと見切り着けたいんです」 「――待て。何かそれでいくと、もし俺とのセックスが良くなかったらさっさと別れるって聞こえるんだが?」 「まあ、有り体に言えばそういうことですね」 「んじゃオメー、俺と付き合ってるのは躰目当てだったのかよ!」 さも当然のことのように、肩を軽く竦めて見せる怪盗に、涙目でツッコミを入れる俺は恋人として間違っているのだろうか。 「別にそうは言ってないでしょう? それ以外に好きなところがなければ、最初からあなたの告白に応じたりしませんよ」 「……頼むから、もう少しだけ猶予をくれ」 「仕方がないですねぇ…今夜は引き下がりましょう。でも、可能な限り迅速に願いますよ? 私もいつまでも待っていられるほど暇ではないので」 「――分かった…分かったから……」 手と手が触れ合った瞬間に火傷をしたように赤面して顔見合わせたり、「何見てるんですか?」「お前を」とか言って、恥じらうお前に「何バカなこと言ってるんですか…///」とか言われて睨まれたり…なんて、少女マンガみてーな甘い展開求めたりしねーから……。 せめて…。 せめて、もう少しだけ『お付き合い始めの初な関係』の、夢を見させてくれ…!! 「で、ローションとかゴムは名探偵がご用意されますか? それともこちらで用意しますか?」 「………」 何と言うか…。 海の空と空の青みたいに。 何処まで行っても混ざり合わない平行線?(泣) QUIT.
2005.6.18. GUREKO
K瀬さんサイトでぶちまけてきた「上に乗る度胸怪盗(受)」と「可愛らしい探偵(攻)」を目指しつつ、アタシまた大逆走か……ハハハ…(乾笑)←注・K瀬さんの仰っていた本来のコンセプトは逆です(笑)
台詞コントを極めたいと思いつつ、なかなかテンポ良く書くのは難しいなぁ…と(*ノノ)つーか、これってれっきとした襲い受け怪盗? にカテゴライズして宜しいものか。
最初、某所用に書いていたので短いです(爆)…ネタがネタなので、ランダム表記じゃあんまりかと自粛してみたり(あはは、うふふ〜)
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