「Core」 新快。Track:15「思念層」の、コワレ怪盗と東の名探偵がくっつくと、こんな感じ(爆)
冷涼な凛とした、ストイックな佇まいが、己の植える快楽に戸惑った子供のような頼りなさで。 無邪気で爛漫な、今だ性の生々しさを遠く隔てるような幼さが、己の与える愛撫に艶やかな悦の色を帯びて。 乱れて。崩れていく姿を見るのは。とても気分の良いものだった。
昼には聴かせぬ濡れた声と、夜には見せないあどけなさが、「俺」という存在によって混じり合い。
「……っ、ぁ…」 濡れた、熱い吐息が漏れる唇を己のそれを押し当てて、戦く舌を絡め取り、呼気をも奪うような荒々しさで貪る。 「んん…っふ、ぁ…っ」 抱え込んだ身体を一層深く貫けば、常の粗暴さや幼さが嘘のような、艶やかな熱を帯びた声が漏れる。悦と苦しさに歪む表情は、見惚れるほどに扇情的で綺麗だった。 昼の彼は夜の姿とは対照的に、姿勢も口も悪い。意図してのことなのか、わざと自分の整った容姿を忘れ去られるような、粗野で子供っぽい言動で、一介の何処にでも居る「高校生」を『演じ』ている。 「はぁ…ぁ…っ、あ…」 猛々しく憤る欲望を、欲求のまま、本能のまま激しく柔らかな内壁へと突き入れる。衝撃に引きつれるように抱え込んだ腿が震え、熱くなった内部が新一をきつく締め付けた。それに少し詰めた息を吐き、僅かに眉を顰めて。 「……感じてるフリ、すんな」 「……っん、ぅ…?」 唇が触れ合うような近さで囁かれた言葉に。彼の閉ざされていた瞳がゆっくりと開かれ、潤んだ群青が新一を見上げる。濡れた双眸は、凪いだ湖面のように静かに、底が見えない。 気付いたのが幾度目の交わりの時だったのか、定かではない。怒りはなかった。ただ、初めての時に、初めての朝に。彼に『ごめんな…?』と、言われた意味が『そう言うこと』なのだと、漸く合点がいった。 「演じる必要はねぇ…ってんだよ。バーロ…」 相手の快楽を引き出そうと、相手の理性を奪おうと躍起になるほどに、研ぎ澄まされ、澄んでいく気配。潤んだ瞳の奥にはっきりとした知性と理性の光を見つけるたびに。痴態も、悦も、全部偽物のクセに、嘘のクセに。それを知っていても煽られる。騙されていても相手に奮る欲は消えない自分は、大概『モノズキ』なんだろう。本人がその反応を意図していない、という事実も、それに拍車を掛けているのだろうが。 「……気付いて、た…んだ?」 困ったような、途方に暮れたような、しかし理性を完全に残した瞳が、覆い被さる熱に浮かされた新一の姿を映し出す。表面だけは、濡れたままで。 「…まぁ、な……っ」 「――…っ」 口元に小さく苦笑を浮かべつつ、それでも行為は止めない。上がった息で告げながらも、更に内部を揺さぶる。 「ごめ…っ」 「謝る、な…ちゃんと、分かってんから。――お前が、不感症なわけじゃ…ないって、ことも……」 「その『表現』は、流石に…失礼だな」 ベッドで汗まみれになって交わすには、些か色気に欠けるような、言葉の応酬。 それでも。 「感じたフリなんてしなくても、ちゃんと煽られてるし、俺は充分気持ちイイから…お前は余計な気ぃ遣う、な…」 「……ん」 ――悪ィ…名探偵。 ボソリと呟いて。彼は目を閉じる。『演じ』ることをやめた彼は、良くできた人形のようだった。 IQ400。人類の、規格外。 その高すぎる知性は、通常の人間が無意識に行う生態行動さえも、己の意志の制御下へおく。己の意志で反射的な行動さえも制御しうる彼は、その気になれば容易く心拍数を自由自在に変えるし、発作のひとつも意識的に起こすことが出来る。体温すら、必要に応じて己の意志で調整する事が出来る。 逆を言えば、本来なら意識しない事項までをも、常に調整し続けているということで。時に呼吸すら、鼓動すら、制御している。己の意志で。 そして、同時に。彼の鋭敏すぎる神経は、感覚は。ともすれば強すぎる、理性を曇らせる刺激を、無意識に、自動的に思考から切り離す。痛みも、苦しさも――快楽すらも。五感と思考の間に、強固な「理性」というパーテーションをひとつ。夜を駆ける怪盗としては、それは必要な能力だったのだろうけれど。 感じていないわけではない。けれども、それを脳は、怪盗KIDとしての理性は『不必要・不易なもの』と判断し、切り捨てる。情事の始まりにいつも耐えるように眉を顰めるのは、快楽や苦痛が原因ではなく。逆にそれを『切り離す自分自身』を押さえ込もうとする、『黒羽快斗』のなかの『怪盗KID』との葛藤。『黒羽快斗』はそれが例え「苦痛」でも、新一から与えられるものをギリギリまで、感じたいのだ、と。 「感度が、良すぎる…のも、厄介なもんなんだな…」 「――俺は、繊細に、出来てる…んだよ」 「言ってろ…バーカ…」 身体はどれだけ快楽を知覚していても、どれだけ翻弄されていても。逆に彼の理性は静かに研ぎ澄まされ。奮る身体と裏腹に、思考は益々冷静に――平静になっていく。新一が、求めれば求めるほど。与えられる快楽に、身体が馴染むほどに。それに対する罪悪感が、また無意識に『感じている自分』を演じてしまう。 「……っく」 「…っ」 新一が彼の内部へ熱を放つと、引きつり痙攣する器官に引きずられるように。人形のような彼が、僅かに小さく息を呑んだ。
* * *
夜に飛ぶ白い鳥と。
「全部」
怪盗と、高校生の、どちらを望んでいるのか? と、訊かれて。
「全部、だ」
ぬけぬけと、躊躇無く。いっそふんぞり返るくらいの居丈高さで、言い放った。
「……それは、無理」 呆れたように、愉しそうに。小さな笑いを零して「キミ」が歌うように言う。 「だって俺自身にだって、もう分からないんだ。今の俺が『本当』なのか――今の感情が、本当なのか…それとも『偽物』なのか」 戯けたように、肩を軽く竦めて。 「多分…俺はお前のこと『好き』なんだと思うよ。でも、それが『真実』なのか――俺にも、もう分からない」 余りにも、偽り、作りあげることに慣れきった。演じ続けてきた『心』は、幾重ものヴェールに覆い尽くされて。最早自分自身にも、それが『本心』なのか『演技』の一環なのかという区別が付かないらしい。正体不明・確保不能の、幻のような怪盗の時間は、彼自身をも『正体不明』に、煙に巻いてしまったらしい。
「離人症の症状に、近い…かなぁ?」 こう、心のなかに『パーテーション』を区切ってさ。 ふたり、ベッドに横たわったまま。胸の前に、長い綺麗な指先が、見えない線を引く。 「いつも、どこかに『違う自分』が存在してて…何か遠い感じがする」 「俺が全部、見付け出してやる」 間髪おかずに、即答した。 「俺だって、伊達に『迷宮無しの名探偵』だなんて大層な名で呼ばれてんじゃねぇからな?」 不遜に、不敵に。口元に余裕を。瞳に決意を刻み。 「いつか、絶対に俺が本当のお前を暴いてやる」 ――本人すらも、見失った『真実』を。 「精々、覚悟しやがれ」 恋人同士の事後のピロウトークには相応しからぬ、駆け引きのような、勝負めいた言葉のやり取り。かつての対峙と変わらぬ緊張感と高揚を胸に抱き。この腕に抱いていながら、今だ遠いキミを想う。解を、求める。 「――期待しないで、待ってる」 俺の宣戦布告に。 夜の咎人。昼の迷い人は。愉しげに、呆れたように、小さく微笑んだ。空虚な、遠い笑み。昼にも、夜にも見せない、遠い瞳。キミが見失った『本当のキミ』には、まだ、遠い。
それでも。また、一枚。
QUIT. GUREKO_wrote. 2004.9.19. |
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