【勇者?】 ―X-ray・番外―
「よ…寄るなっ!!」 「――んだよ…、冷てぇこと言うなよ……」 「いいから、これ以上近付くんじゃねぇっ!!」 引きつり、青ざめた硬い表情で、悲鳴のような懇願を口にする『工藤新一』、故あって現在『江戸川コナン』に、黒羽快斗は不満げに唇を尖らせた。 「……ちぇーっ」 「『ちぇーっ』じゃねぇ!! お前、自分がどんな恐ろしいことを言ってるのか、ちゃんと分かってるのかっ!?」 壁際まで追い詰められ、逃げ場のない状況からようやく解放されたコナンが、拗ねたように頬を膨らませてそっぽを向く快斗を怒鳴りつける。 ――まだ、少しばかり引きつった表情のままで。
「だって…俺が『良い』って言ってるのにさー…」 「だから…っ! 『俺』が嫌だって言ってるんだよっ!!」 「――嫌なの…?」 「さっきからそう言ってるだろっ!!」 「そっか…嫌なんだ……」 溜息。快斗は、ガックリと肩を落とした。
「――おい、ちょっと待て…」 一気にトーンダウンした快斗の声。嫌な予感(残念ながら、今まで外れたことがない)に、コナンは目の前の肩へと、その小さな手を伸ばす。 「――俺のこと…嫌いになった? つーか、俺のこと好きだって言うのも嘘だったんだ……」 憂いに満ちた、ついでに涙が零れ落ちる寸前まで満ちた、群青の瞳が哀しげに、コナンを見据えた。 「…っ!! バーロッ!! 何でそうなるんだよっっ!!」 少なくとも、それはほぼ90%以上の確率で『演技』だと分かっている。――でも、何しろ相手は、どうしようもなく『規格外』なのだ。例え『それ』が、僅か1%に満たなくとも、演技以外の――本当に疑心が入っていたのだとすると、非常にマズい。 ――泣きたいのは、こっちだった。
「だってさ…新一、俺のこと好きだって言ったじゃないか……」 ――キスだってするクセに。 床にへたり込み、潤んだ瞳のまま上目遣いで見るのは反則だろ…と、思った。
「だから…さ……」 戸惑うように。恥じらうように、瞳を伏せて、訴えるようにこちらを見つめるのも、正直今の新一(故あって現在、小学生・江戸川コナン)にとっては『凶悪』だった。
「無理だーーーーっ!!!」 叫びは、悲鳴だった。
「絶っっ対! 無理だっ! 無謀だっ!!」 「し…新一っっ!?」
余りの悲壮な剣幕に、やや気圧されたように、快斗がパチパチと瞬きをする。潤んだ瞳から、嘘か誠か判断の難しい涙が、ぽろりと零れ落ちた。 ハッキリ言って『拷問』だった。敵は、己の欲と、己の油断の招いた現状だった。 「いっくら今の俺の手がちっさいからって、初心者が『フィストFA●K』になんて挑戦しようとするんじゃねぇーーーーっ!!!」 半ば自棄で口にした、身を切るような伏せ字の悲痛な叫びが、辺りに響き渡った。
「……俺は別に、そこまでしろとは言ってないんだけど…」 「バッカ言うんじゃねぇっ! この身体でお前満足させようと思ったら、そのくらいしねーと『届かない』だろーがっっ!!」 「――そうなの…?」 「そうだ」 かといって『初めて』が道具なんて、それ以上に冗談じゃない。
「だから、金輪際今の俺を襲うのも誘うのも禁止っ!!」 ビシィっと。指を差してそう釘を差す。
「……ちぇーっ…」 「『ちぇーっ』じゃねぇ!」
『据え膳』状態を蹴って泣きたいのは、工藤新一(故あって…以下略)のほうだった。
QUIT.
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